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 2011年9月28日に全日本空輸(ANA/NH)のボーイング787型機(787-8、登録記号JA801A)が羽田空港に初めて降り立ってから10年が過ぎた。米シアトル近郊にあるエバレット工場で現地時間25日午前8時(日本時間26日午前0時)に、ローンチカスタマーであるANAへ引き渡され、28日の羽田到着時には多くの人が展望デッキで出迎えた。 787の前に並ぶ(左から)ANAの川井マネジャー、浅井マネジャー、青島マネジャー。787の世界初受領から10年を迎えた=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire  ボーイングが「ドリームライナー」と名付けた787は現在、標準型の787-8、長胴型の787-9、超長胴型の787-10の3機種があり、ANAは全機種を導入。9月28日現在、787-8を36機、787-9を37機、787-10を2機の計75機を受領済みで、ボーイングの受注残によると8機の787-9と12機の787-10の計20機が受領待ちとなっている。  機体の構造部位のうち、35%を日本企業を製造。ANAの787はラバトリー(化粧室)に温水便座「ウォシュレット」を採用した。外観も初号機と2号機(JA802A)は特別塗装となり、前部胴体に「787」と大きく描き、後部の藍色に交差するラインは「ANAのネットワーク」と「ANAのプロダクトサービスブランド」を表現した。 羽田空港に着陸するANAの787初号機JA801A=11年9月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire  世界初の787による商業運航は、2011年10月26日に成田を出発した香港行きチャーターのNH7871便。その後定期便に投入され、国内線は11月1日の羽田発岡山行きNH651便、国際線は2012年1月14日の羽田発北京行きNH1255便が初便となった。  世界で最初に引き渡されたANAの787は、自動車の車検に例えられる機体のCチェック(重整備)も最初に行われ、2014年6月から7月にかけて行われた。Cチェックはおおむね1年半から2年ごとに行われ、2回目は2017年4月から5月に実施しされ、直近では2020年2月から3月にかけて3回目のCチェックを終えている。  胴体がCFRP(炭素繊維複合材料)製になり、777など既存機と比べてコンピューター制御の部分も増えた787。新技術が数多く採用された機体を見守ってきた整備士たちには、どのような10年だったのだろうか。 —記事の概要— ・壊れないCFRP ・ソフトウェアも安定 ・就航後も改修提案 壊れないCFRP  CFRPは機体の軽量化に貢献しているが、整備作業では従来のアルミとは違った作業や点検が必要だ。例えば空港で駐機中、貨物コンテナを積み込む車両などがぶつかるケースがある。アルミは板金で対処できたが、CFRPは見た目だけでは損傷を受けていないように見える場合もある。 14年に行われた世界初の787のCチェック=14年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire ANAの浅井マネジャー=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire  整備士として787の領収検査に立ち会ってきたANAの整備センター 機体事業室 ドック整備部の浅井祐樹マネジャーは、「衝撃に弱いため、中で剥離している場合があります。アルミはコロージョン(腐食)を見ていましたが、CFRPはコロージョンがないので、クラック(割れ目)がないかを確認しています」と、既存機とは異なる視点で点検する必要があるという。  補修作業が発生した場合も気を遣う。整備センター 技術部 技術企画チームの川井渉マネジャーは「CFRPは接着が難しく、温度管理や気泡が入らないように作業しています」と、素材の特性上やり直しを何度もできない難しさがあるという。  浅井さんは「CFRPは普通壊れません。壊れてしまうと大変なんです」と話す。ドック整備部の青島誠マネジャーも、「CFRPは温度と湿度の管理が必要で、非破壊検査の要求もかなり厳しいです」と、壊れない素材ゆえに損傷を受けた際の補修は大変なようだ。 ソフトウェアも安定  787はこれまで油圧制御だったものが電気制御に置き換わった部分も多く、コンピューター制御も増えた。「油圧ではエア抜きや正常に動作するか、油漏れがないかといった点検が主でした。787は電気系統も正しくつながっているかの点検も加わっています」(浅井さん)と、動作確認の範囲が広がった。 2回目のCチェックで水平尾翼の整備作業が進むANAの787初号機JA801A=17年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire ANAの川井マネジャー=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire  主翼にあるスポイラーの場合、片側7枚中2枚が電気で動くエレキスポイラーになり、残り5枚は油圧制御だ。油圧も進化し、昔よりも小型化しているという。  点検作業の範囲が広がった一方で、整備士を支援する仕組みも充実している。「テストはすごく進化しています。CMC(セントラル・メンテナンス・コンピューター)でテスト項目を選択すると接続なども確認してくれます。テストにパスしなかった場合は、どこが悪かったかをワイヤリング(配線図)で追ったりします」(浅井さん)。  コンピューター制御が進んだ787を、川井さんは「パソコンと一緒ですね。自動車だと(電気自動車の)テスラみたいなものでしょうか」と表現した。「整備士がマニュアルに従って作業しても直らず、ソフトウェアの問題だったこともあります」(川井さん)と、ソフトウェアの不具合に起因する問題もあるという。  浅井さんは「今までは故障した物を見て原因がわかったことも、整備士と技術部門のスタッフ、メーカーが連携して対処することが多くなりました」と、問題を解決する方法にも変化があった。  「以前は不具合を知らせるメッセージが出ても正常なケースがあったのですが、ソフトウェアの改修が進んで安定してきました」(浅井さん)と、10年で熟成が進んだ。 就航後も改修提案  機体の構造や客室内の装備も、運航していく中でボーイングに改修を提案していったものもあった。…
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