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【インタビュー】K、冬の景色と切ない心情をじっくり噛み締めさせてくれる「winter light feat. sloppy dim」

BLOOM VASEのメンバーとしても活躍するOveとsyunのユニットsloppy dimを迎えた「winter light feat. sloppy dim」。80年代のブラックコンテンポラリー的なテイストにモダンな要素を添加して構築されているメロウなサウンドが心地よい。冬の景色と切ない心情をじっくり噛み締めさせてくれる曲だ。昨年配信リリースされた「Day‘N’Night feat. MADz’s」「Touchdown feat. VILLSHANA」もまさしくそうだったが、最近のKはコラボレーションの機会を積極的に求めながら様々な可能性を切り拓き続けている。このような姿勢の背景にある想い、新曲の制作エピソードなどについて語ってもらった。■一番好きな80年代っぽい音楽をずっとやってるから■80年代後半から90年代のブラックコンテンポラリーを作ってみよう――昨年の6月にリリースされたsloppy dimのアルバム『Coordinate』に収録された「Pool feat. K」に続く彼らとのコラボですね。K:はい。あの曲を作った時は「どっちの作品に収録しましょうか?」という話はしていなかったんですけど、sloppy dimのアルバムに入ることになったんです。それを経て、今度は僕の曲に参加していただくことになりました。――sloppy dimとの出会いのきっかけは?K:僕がYouTubeで彼らを見つけて、僕の方からDMをしたんです。すぐに返事が来て、「一緒にやりたいです」ということになりました。マネージメントを通さずに、本人たち同士のやり取りの段階で、いろんなことが決まっていったんです。――MADz'sやVILLSHANAの時もそうでしたけど、Kさんの音楽に対するアンテナの感度と行動力はすごいですね。K:新しいアーティストを探せるメディアが昔と比べると変わってきていますからね。そういう中でたまたまsloppy dimとも出会ったんです。――ネットやSNSを通じて音楽と出会う機会が増えているのは、僕も感じています。K:sloppy dimもネットで出会う音楽を聴いて育ってきた人たちなので、それが当たり前の感覚というか。そうやってミュージシャン同士が繋がっていけるようになっているのは、すごく良いことだと思います。――DMで突然連絡が来て曲を一緒に作るというのは、sloppy dimも何度も経験しているでしょうね。K:前にもそういうことがあったみたいです。MADz'sも「一度も直接会わずに作品を作って、その後にまた次の作品の制作をしたことがあります」って言っていました。sloppy dimともすぐに「一緒にやりましょう」ということになりました。彼らはリリックが先で、その後にトラックに音をのせるという考え方、作り方なので、僕とのバランスも良かったと思います。「僕がトラックを作るから、のっけてね」っていうシンプルなやり取りをしながら作っていくことができました。――「Pool」に続いて今回の「winter light」もラブソングですけど、リリックのストーリーに繋がりはあるんですか?K:繋がりに関しては考えていなかったです。僕の1つ前の曲(Touchdown feat. VILLSHANA)がラブソングではなかったのと、最近バラードをあまり書いていなかったというのもあって、今回こうなったんです。「winter light」はバラードというのとも少し違いますけど、落ち着いたテンポでやってみたいというのは思っていました。――80年代辺りのブラックコンテンポラリー的なテイストですね。K:はい。この曲のトラック、ビートを最初に作ったのは、去年の夏前くらいだったかな? 「Pool」がリリースされた直後くらいだったんですけど、その時期にある楽器を買っていろいろいじっていたのが大きなきっかけでした。新しい楽器を買うと曲を作りたくなるんですよ。僕がその時に買った楽器はソフトシンセ。TOTOの「Africa」に出てくる実機のシンセの音にそっくりだったんです。「よくできてるなあ」って感心しながらいろいろいじっている内に、「こんなのもいいなあ」っていうのが出てきて、曲全体の枠が形になっていきました。――自然な流れだったんですね。K:はい。「どういう雰囲気のものに落とし込むのか?」というのは後から考える感じでしたね。「そういえば……80年代っぽい音楽をずっとやってるから、自分が一番好きな80年代後半から90年代に至る前までのブラックコンテンポラリーを作ってみよう」っていう感じでしたから。そういう曲って今までやっていなかったので。例えばBabyfaceがBoyz II Menをプロデュースする前の頃の音楽って、僕はものすごく好きなんですよ。――シンセサイザーの音色って、時代の雰囲気がすごく表れますよね。例えばヤマハのDX7の音を聴くと80年代のムードを感じますから。K:「winter light」でもDX7とかの音をところどころで使っています。ヤマハ、ローランドとか、実機のシンセをここ最近の制作の中では一番使いましたね。――ソフトシンセでは出せない実機ならではの音って、あるみたいですね。K:そうなんです。「実機だとノイズが入って音が汚くなるから、それが味になる」って言う人もいるんですけど、それだけじゃない何かしらの理由があるんでしょうね、きっと。――「winter light」は80年代テイストの音色で彩りつつも、ハイハットとかも含めて、リズムの感じはすごく現代的ですね。K:はい。80年代後半の音楽は、僕にとってリアルタイムで聴いていたものではなかったですからね。例えば過去の音楽へのオマージュというやり方もありますけど、それよりも懐かしさがありつつも新しいものを作りたいというのは思っていました。――80年代的なテイストって、今の10代、20代くらいの層にとっては新鮮なものとして受け止められることが多いらしいですよ。K:そうみたいですね。僕がプロになってちょっと経ってから70年代のものが流行りだしたので、今はまたそういう感じで80年代のものが流行り始めているのかもしれないです。80年代って音楽を聴くとすごくわかるんですけど、元気があるんですよ。ギラギラしたパワーがあって、すごく派手。90年代から00年代くらいまではそれがダサいとされていましたけど、今はそういうものが求められつつある気はしています。80年代の文化は行ききっているというか、中途半端じゃない勢いがあるんですよね。――あの頃、音楽もいろいろ進化しましたからね。ヒップホップがどんどん進化して、RUN DMCとエアロスミスがコラボをしたり、いろいろ賑やかだった記憶があります。K:音楽が「聴く」から「観る」になっていったのも80年代ですよね。ミュージックビデオとかもどんどん作られるようになっていきましたから。――曲を作っていると、「この頃の音はこういう時代背景が表れている気がする」というような発見もありそうですね。K:発見がたくさんあります。作りながらいろいろ発見して、「こういうのがあるんだ? じゃあ、次はこういうことにチャレンジしてみよう」とかいうのもどんどん出てきますから。――Kさんは古いものから新しいものまで、常にいろいろな音楽を吸収して、着々と創作に反映している印象があります。K:僕はこの10年くらいの間でレコードにハマっているんです。古いものも新しいものも聴いて、音楽に対してわりとフラットに向き合っているんですよね。デビューしてからレコードにハマる前までは「これはこうだから、こうなっている」とか、音楽をデータとして聴く意識になってしまっていたんですけど。それで音楽を聴くのが嫌になって、離れていった時期もあったんです。でも、そういうのは良くないと思って、高校生の頃みたいな感覚で音楽を楽しむ習慣をつけるためにレコードを聴くようになったんです。それ以来、移動中にカーラジオで音楽を聴いたり、家にいる時によくラジオのスイッチを入れるようにもなりました。音楽をランダムに聴いて出会うというのは、意識的にやっていますね。――Shazamで気になった音楽の曲名を調べたりするのも、よくやっているんですよね?K:はい。Shazamは優秀です。曲を作っている時も使うことがあるんですよ。例えば8小節作って、何かのパクリじゃないかどうかも調べられるので。――なるほど! そういう使い方もありですね。K:他の曲と同じ展開のものが出てくる時も稀にありますからね。Shazamはキーと展開が同じだったら表示されるんです。あと、最近はビートを売っているサイトでタイプビートを購入して、それを使って歌って曲をリリースするのが主に若い子の間で流行っているんです。だから同じオケを使った複数の曲がリリースされることもあるんですよね。そういうのもShazamを使うとわかります。――同じビートでも、どういうメロディ、ラップをのせるのかは、人それぞれですからね。K:そうなんですよ。僕は自分ではそういうことをやらないですけど、すごく面白いカルチャーだと思っています。もちろん、それに対していろんな意見はあるんですけど。――サンプリングに関しても昔は否定的な人が多かったですからね。ネタを使って新しいものを構築するのもクリエイティブな行為だと僕は思っていますし、同じビートを使うことに関しても、そういう考え方の人が増えていくんじゃないでしょうか。K:そうですね。サンプリングで作るのがかっこいいと思う人が、今はたくさんいるわけですから。いろいろ編集して自分なりのものを表現するのも大事だし、一から作るのも大事だと僕は思っています。両方なくなって欲しくないですね。――Kさんは両方の可能性を楽しめる感性の持ち主だから、年下のミュージシャンたちとのコラボも楽しめているんでしょうね。K:そうかもしれないです。だから、そういう感覚は失いたくないです。柔軟であることもそうですし、「素直に音楽を受け止めるかどうか?」がすごく大事だと思っています。僕は柔らかな精神状態で創作に臨まなければいけない職業でもあるわけですからね。頑固おやじみたいに筋を1本通し続けられる人だったらそれもいいと思いますけど、僕にはそういうのは合わない気がしています。カルチャーっていろいろなものがミックスされていって新しい何かが生まれていくものですし、そこは否定できないですからね。――様々なものがミックスされて、ボーダレスになっていく積み重ねが文化の歴史ですからね。K:そうなんです。そういうことがなかったらジャズもロックもブルースも生まれなかったわけですから。――今はインターネットとかもボーダレス化を加速していますし、その可能性を楽しむ方が健全だと僕は思っています。K:僕みたいな作る側だけじゃなくて、発信したりする側、スタッフの意識も変化してきているのを感じます。昔は例えば「J-POPとはこうである」というような考え方の人が多かったですけど、今は「曲が良ければそれでいいじゃない?」っていう感じの人がどんどん増えているんです。そういう状況を見ると、グラミー賞とかを獲る人が出てくるのも遠くはないかもしれないなということも思います。――作品を全世界に発信できる速度もどんどん上がっていますからね。作った曲を数時間後に配信するとかも可能ですから。K:そうなんです。そういうことに関しても柔軟になっていったらさらに面白くなるでしょうね。うちのスタッフはすごく優秀で、僕がやってみたいと思うことに対してすぐに動いてくださる方々が多いんです。「DMで連絡をとったら、一緒にやることになりました」って僕が言ったことに対して、「やろう!」ってなってくれるので。◆インタビュー(2)へ
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